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【特許で解説】月桂冠の糸こんにゃく

こんにちは!ぱかぞーです!
今回は月桂冠の糸こんにゃくに関する特許を紹介します!

【特許公報の利用について】

◆特許は出願する企業にとって製造販売を独占的に行える排他的な権利です。
◆従って、企業は特許に他社よりも優れた点を嘘偽りない事実のみを書きます。
◆カタログやCMなど企業にとって都合のいい情報だけではなく、客観的な事実が特許では語られるのです。

【本記事を読むことで得られるメリット】

消費者は類似他社品と比較して正しく判断して購入することができます。
◆投資家は特許に書かれている製品に価値があると判断したならば十分な投資対象となります。
◆業界人は競合他社の数年後の動向がわかるので将来性の市場戦略がわかるようになります。
就活生は、今後数十年間務めるかもしれない会社の将来性を判断することが出来ます。

目次

出願人(会社)について

月桂冠

どんな発明をしたのか

糸こんにゃくをちぢれさせ、ヒレをつけた。

どんな利益が期待できるのか

調味料と糸こんにゃくの絡みつきが良くなるため、美味しくなる。

同業他社と比べて優れている点

・調味料との絡み付が良い
・歯ごたえが悪くない
・のど越しが悪くない

まとめ

出願人(会社)について

特許6700467より引用

【出願人】 月桂冠株式会社

今回の出願人は日本を代表する酒造メーカーの月桂冠です。
従業員は400名弱の中小企業の中といった規模の会社です。

酒造業界では大手ですが、売り上げトップは白鶴酒造という会社です。
こちらの会社も親しみのあるお酒を多く出しています。

白鶴酒造程の有名企業であれば上場していると思ったのですが、上場しておりませんでした。
酒造業界自体が他の業界と比べて大きくなかったり、買収されて酒造技術を盗まれることを避けているのかもしれません。

月桂冠といえば「日本酒」です!
月桂冠のお酒にお世話になっている人は多いのではないでしょうか。

月桂冠は単にお酒を製造しているだけではなく、花王と一緒に研究開発も行っているそうです。
そんな技術力のある月桂冠からどんな発明品が登場したのでしょうか。

どんな発明をしたのか

特許6700467より引用

【請求項1】
  長尺の一本の蒟蒻からなる芯部と、  前記芯部より細い長尺の蒟蒻からなる1本以上の外芯部とを有し、  前記芯部に前記外芯部が不規則に付着してなる糸蒟蒻。

発明したものは「糸蒟蒻」です。
従来の糸蒟蒻と比べて少し形状が異なるようです。

前記芯部に前記外芯部が不規則に付着してなる糸蒟蒻。

重要な文章は上記の部分です。
それ以外は糸蒟蒻であることの説明をしています。
前期芯部」は糸蒟蒻のことであり、「外芯部」は糸蒟蒻の表面に付いている部分を指しています。
その外芯部が「不規則」に付着していることが、本特許の発明部分です。

従来の糸蒟蒻は基本的には麺のように一本のまっすぐな紐状です。
場合によっては平麺のように形状が異なるものがありますが、どの部分を切り取っても同じ形です。

しかし、今回の発明品は糸蒟蒻の形状を変えつつ、「不規則」な形状としたことが画期的なものとして特許として認められたのです。

どんな利益が期待できるのか

特許6700467より引用

【発明の効果】
【0021】
  本構成の糸蒟蒻によれば、2本の外芯部の共通の接線と芯部との間に、2本の外芯部の対向面部と芯部の外表面とによって調味液溜め部が形成されるので、より多くの調味液が調味液溜め部に溜められることになり、調味液の絡みつきがより良くなる。

「発明の効果」は特許において請求項の次に重要な文章です。

世の中に無い物を発明したとしても、その発明によって得られる効果が無いのでは特許にはならないのです。

例えば、世の中に2輪自転車しかなかった世界があったとして、3輪の自転車を発明したとします。
その発明品を出願するときに「発明の効果」を歩くよりも楽に進むことができることとします。

この場合、特許として認められる可能性が低くなります。
なぜなら歩くよりも楽に進める効果は2輪自転車と一緒だからです。

もし、「2輪自転車よりも安定して進むことができる」という効果であれば顕著な効果として特許として認められる可能性が高まります。

糸蒟蒻は表面がつるつるしており、汁などの液体との絡みが悪いものです。
本発明の糸蒟蒻は汁との絡みを良くすることを顕著な効果として書いており、特許として認められたのです。

この発明品によって、我々消費者は汁と糸蒟蒻との絡みつきが良くなるので、糸蒟蒻をおいしく食べることができるようになります。
例えば、すき焼きなど糸蒟蒻はすき焼きの汁に絡みにくいので長時間に込む必要がありましたが、本発明の糸蒟蒻であれば、すぐにおいしく食べれるようになるのです。

同業他社と比べて優れている点

特許6700467より引用

【0015】
  本構成の糸蒟蒻によれば、長尺の一本の蒟蒻からなる芯部に、芯部より細い長尺の蒟蒻からなる1本以上の外芯部が不規則に付着してなる構成とされるので、見た目が手で揉んだような不均一な形状を有する縮れ麺のようになり、従来の糸蒟蒻にはない独特の歯応えの食感を得ることができる。また、本構成の糸蒟蒻によれば、それ程太くならない上に、糸蒟蒻が喉を通る際の喉越しが良くなる。さらに、本構成の糸蒟蒻によれば、断面円形状の通常の糸蒟蒻と比べて同一長さあたりの表面積が増えるとともに、芯部と外芯部との境界に溝が形成されてその溝に調味液が溜められるので、調味液の絡みつきが良くなり、味付けがし易いものとなる。

他社と優れている点は3つあります。

独特の歯ごたえ
・太くなくのど越しが良い
・調味料の絡みつきが良い

特許としては、調味料の絡みつきを顕著な効果として認められていますが、それ以外にも良い効果があれば書いても良いのです。

「歯ごたえ」や「のど越し」も従来の糸蒟蒻よりも優れているのは良いことですね。
調味料との絡みつきが良くなっても、食感が悪くなってしまえば食べ物としては不十分ですからね。

特許は従来にない新しい構成と、効果であれば特許として認められます。
しかし、商品として完璧である必要はないのです。

今回の糸蒟蒻も形状が新しく、調味料が絡みつき易くすることが特許として認められていますが、美味しい必要はないのです。

この部分を理解した上で特許を見る必要があるのです。

まとめ

◆月桂冠がちぢれたヒレ付きの糸こんにゃくを発明した。
◆発明された糸こんにゃくによって調味料との絡み付が良くなり、糸こんにゃくの美味しいさが増す。
◆この発明は「味しみ贅沢こんにゃくシリーズ」として藤清から発売されている。
◆今後20年間、同業他社は商品を真似することが出来ない。しかし、過去、糸こんにゃくブームが起きたこともなく、市場も大きくないため投資対象とすることを考えた方が良いかもしれない。

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