今回は特許6983005を紹介していきます。
*詳細を知りたい人は該当の特許番号から直接お調べください。

- 出願人(会社)について
「テスコム電気株式会社」 - どんな発明をしたのか
「生成した熱を効率的に使用者の毛髪へ伝達すると共に、組み立て容易なヘアアイロン」 - 登録までの経緯(拒絶理由と補正内容)
「明確性違反」と「進歩性」を拒絶されたが、「新規性」は認められていた。 - どうやって発明したか
「ヘアアイロンの金属プレートに穴を開け、その穴から熱の伝わり難い樹脂のクシを突出させ、樹脂のクシの根本と髪の毛を接触しないようにした。」
テスコムは理容機器の大手販売メーカーです。
我々のイメージとしてはヘアドライヤーでよくお世話になる会社です。その製品の特徴はリーズナブルな価格設定なのに機能的なハイコスパであることが多くなっています。ドライヤーはパナソニックなど超大手企業も進出しておりますが、テスコムは理容機器に絞った製品展開を行なっています。会社設立当初からヘアドライヤーを扱っていますので、ドライヤーといえばテスコムでしょう。業務用に採用されるドライヤーもテスコムが多くなっているそうです。
「生成した熱を効率的に使用者の毛髪へ伝達すると共に、組み立て容易なヘアアイロン」を発明した。
樹脂により複数の櫛歯が一体的に成形されたヘアアイロンが知られています。櫛歯は、一般的に樹脂が用いられ、熱不良導体であることが多くなっています。ヒータからの熱を使用者の毛髪に伝える観点からは、ドライヤーを熱不良導体で形成することは好ましくありません。そこで、アイロンユニットの一部を熱良導体である金属部材とし、そこへ複数の櫛歯を根元で一列に接続した直線状の櫛歯部材を埋め込んだヘアアイロンが知られるようになってきました。
しかしながら、金属部材に櫛歯部材を埋め込んだとしても、アイロンユニットが使用者の毛髪と接触する面積に対して櫛歯部材の根元である基部の表面が占める割合は大きく、アイロンユニットが生成する熱を使用者の毛髪へ十分に伝達できていなかったのです。
テスコムは、このような問題を解決するために、生成した熱を効率的に使用者の毛髪へ伝達すると共に、組み立て容易なヘアアイロンを発明したのです。
「ヘアアイロンの金属プレートに穴を開け、その穴から熱の伝わり難い樹脂のクシを突出させ、樹脂のクシの根本と髪の毛を接触しないようにした。」

本発明のヘアアイロンは、直線状の基部に対して一方向に突出する複数の櫛歯が設けられた、熱不良導体からなる櫛歯部材と、複数の櫛歯のそれぞれを貫通させる個別の孔が設けられた、金属からなる表面プレートと、基部を収容する溝部を有し、熱源からの熱を表面プレートへ伝達する、金属からなる熱伝達部材を備えています。
このように熱良導体の表面プレートの孔から櫛歯を貫通させることにより、櫛歯部材の基部が表面プレートの裏側に隠れ、熱伝達部材から熱を受けた表面プレートが広く使用者の毛髪と接触するので、熱伝達の効率が従来技術に比べて大きく向上します。また、複数の櫛歯は基部を介して一体成形されているので、櫛歯が個々に形成されている場合に比較して、それぞれの櫛歯を表面プレートの孔へ挿入する作業や、基部を熱伝達部材の溝部へ収容する作業も容易となりました。
直線状の基部に対して一方向に突出する複数の櫛歯が設けられた、樹脂素材からなる櫛歯部材と、前記複数の櫛歯のそれぞれを貫通させる個別の孔が設けられた、金属素材からなる表面プレートと、前記基部を収容する溝部を有し、熱源からの熱を前記表面プレートへ伝達する、金属素材からなる熱伝達部材とを備え、前記溝部は、前記複数の櫛歯の配列方向に沿って伸延して前記基部をガイドするガイド溝であり、前記表面プレートと前記熱伝達部材とが互いに接触する接触部の一部に、前記ガイド溝の伸延方向に直交する方向への前記表面プレートと前記熱伝達部材の相対的な移動を規制する規制部が設けられ、前記溝部は、前記櫛歯部材が前記溝部の伸延方向に直交する方向へ揺動可能に前記基部を収容し、前記孔の径は、前記櫛歯部材が前記櫛歯を貫通する前記孔を揺動中心として揺動するように定められたヘアアイロン。
請求項1は上記の記載となっております。拒絶理由は、「明確性違反」と「進歩性」について書かれており、「新規性」に関しては認められています。
明確性違反についは「熱不良導体」「熱良導体」の定義を審査官から求められています。これにたいして、テスコムは、「熱不良導体」を「樹脂素材」に、「熱 良導体」を「金属素材」に改めました。
進歩性については、本発明の櫛の材料に樹脂素材、プレートに金属素材を使うこと、プレートに特別な穴を開けて髪の毛への熱の伝わり方を調整することは、当業者なら容易に相当し得ると判断されています。これに対して、テスコムは、「規制部を介して表面プレートを熱伝達部材に対して確実 に位置決めし、表面プレートに設けられた孔の位置を安定させることにより、当該孔に櫛 歯揺動の中心としての機能を担わせています。」と反論し、審査官に認められました。簡単に解釈すると、本発明品の特長は、穴が空いた金属プレートから突出する樹脂(クシ)の位置です。その位置とすることでクシをうまく揺動させることができるのです。
この補正は、容易の否定を主張したものです。既に新規性については認められていますから、テスコムは特許を取得するためには、審査官から提示された複数の従来技術を組み合わせても同じ構成にならないようにすれば良いと考えました。そこで、それらの従来技術には記載のない構成である「プレートから突出するクシの穴の径」を構成に加えたのです。
テスコムは発生した熱を髪の毛に伝わりやすくしたヘアアイロンを発明しました。
ヘアアイロンは、昔からよく使われていました。その形状はその名の通り、アイロンのようなプレートを2枚備えており、使用者の髪の毛を部分的に挟み込むことで、髪の毛を真っ直ぐに伸ばす道具でした。現在も、その形状は大きく変化していませんが、プレートの穴からクシを出すことで髪の毛の絡み合いを解除しながらストレートヘアーにすることもできるようになりました。
今回の発明は、さらにヘアアイロンから発生された熱を効率よく髪の毛に伝えられるようにした発明です。クシの歯は、頭皮を痛めにくくするために柔らかい素材が好意的に求められる一方で、髪に密着する部分であるため、熱を伝えやすい材料であることが良いとされていました。しかしながら、柔らかくて熱伝導率の良い素材はありません。そこで、テスコムは、熱を伝えにくいクシの部材と髪の毛を接触しにくくするヘアドライヤーを発明したのです。使用者から見たらほんの僅かな変化ではありますが、その僅かな変化で大きな効果をもたらすことができたのです。
この発明品は、既に発売されております。
興味のある方は、下記リンクからご購入ください。
![]() | テスコム 公式 TESCOM elims me エリムス ミー TB552A / TB553A マイナスイオン 2WAY ブラシ ヘアーアイロン 価格:5,390円 |
