今回は、下記の特許を解説します。
特許第6284090号(平成30年2月9日)
発明の名称「冷却衣服用冷却装置と、それを装着した冷却衣服」
出願人「株式会社サンエス」
*詳細を知りたい人は該当の特許番号から直接お調べください。

- 出願人(会社)について
「株式会社サンエス 」 - どんな発明をしたのか
「冷却衣服の電力消費を低減することができるシステム(使用者は長い間、涼感を得られるようになる)」 - どうやって発明したか
送水ホースの冷却水分岐部に複数の分水ホースを備え、 前記分水ホースよりも前記送水ホースの直径を大径とし、その分水ホースの直径よりも小さな複数の通水孔を備えた冷却衣服用冷却装置。
株式会社サンエスは、ユニフォームウェア、電子機器、設備機器、制御機器の設計、電子モジュール、ミネラルウォーターの製造・販売を行っている会社です。上場してなく、資本金が1億を下回るので中小企業です。しかし、取引先や資本金を9700万円にしていることから、単なる中小企業にはない力を持っていそうです。
「冷却衣服の電力消費を低減することができるシステム(使用者は長い間、涼感を得られるようになる)」

身体を冷却することができる冷却衣服が市販されています。具体的には、肩の上に貯水タンクを装着し、この貯水タンクから水がホースの中部を通って身体部分で蛇行し、貯水タンクに戻ってくるものです。また、ポンプを駆動することで、送水され循環させる構成となっています。
この冷却衣服の送水ホースには、所定間隔で通水孔が形成されています。その為、一部の冷却水が通水孔から流出し服を濡らします。その部分に送風ファンからの風が通過すると、そこで気化熱が奪われ、その結果として身体冷却を行うことができるようになっています。
しかしながら、このような従来の冷却衣服では、ポンプの負荷が大きく、電力消費が大きいものでした。また、長時間、冷却水が送水ホースの通水孔から大量に流出すると、貯水タンク内の水が失われてしまいます。また、ポンプの圧力が高く、通水孔の開口面積が小さいと、通水孔から冷却水が、送水ホース外に勢いよく飛び出すことにもなり、好ましい冷却動作が行えなくなることもあります。
そこで、本発明品はポンプの電力消費を抑制することを目的として発明されました。
「送水ホースの冷却水分岐部に複数の分水ホースを備え、 前記分水ホースよりも前記送水ホースの直径を大径とし、その分水ホースの直径よりも小さな複数の通水孔を備えた冷却衣服用冷却装置。」

送水ホースの冷却水分岐部まで送付された冷却水は、この冷却水分岐部に連結された複数の分水ホースへと流れ込み、次に、各分水ホースの複数の通水孔から流出することになります。各分水ホースは、非拘束状態なので分水ホースを分散させて配置すれば、身体の広いエリアに冷却水を適量供給することができ、その結果として、冷却効果の高いものとなります。
つまり、本発明では、冷却水を、送水ホースの冷却水供給部から冷却水分岐部までポンプで送れば、その後は、大気に解放状態となっている分水ホースの通水孔から、冷却水自身の重力や、小さな通水孔が形成する毛細管現象も作用し、分水ホース外へと流出することになるので、ポンプとしての電力消費を抑制することが出来るのです。
さらに、この分水ホースの直径と通水孔を工夫することで、分水ホースから流出する冷却水が広い範囲に少量でジワリと滲み出る状態となるので、身体の一部での大きな水濡れ感が無く、快適な冷却が行えるものとなります。
サンエスは、電力消費の少ない冷却衣服を発明することで、使用者は長時間、涼感を得られるようになります。
従来の冷却衣服は、肩に貯水タンクや循環させるためのポンプが備え付けられていました。その為、嵩張りやすく、重さもあり、作業性の悪いものでした。また、ホースから染み出る水も調整が上手くなく、多量に出てしまうと貯水タンクから冷却水が失われて、長時間使用することができませんでした。
そのことに気が付いたサンエスは、作業性が高く、長時間使用できる冷却衣服を発明しました。冷却水を循環させる常識的な考えを捨て、循環させずに散水するだけの構成とすることで、ポンプを無くし、タンク最小化することで作業性を上げ、長時間使用することが出来るようになったのです。
この発明品は、「涼神服シリーズ」として発売しています。興味のある方は下記リンク先をご参照ください。