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特許初心者向け【特許の書き方】①出願前の事前調査について

今回は、中小企業で研究開発を行っている人に向けた「特許の書き方」のテーマに沿って記事を書かせていただきます。
無料でできる出願方法を丁寧に解説していくので、個人であっても本記事と関連記事を読めば出願できるようになります。初めて特許業務を行う前に特許業務を理解しておくこと、出願方法を知っておけば特許業務が苦にならなくなります。

出願は誰にでもできる

特許を書くことは難しいと思いがちですが、誰でも書くことが出来ます。
出願するのに資格や権利も要らないからです。
私は会社員ですが、知財部ではなく、研究開発部に所属しています。
配属後に知財部と交流しながらOJTで特許を学んでいきました。
もちろん、弁理士の資格なんてありません。
しかし、今は海外1件、国内3件を取得しています。
出願には資格も要らないので、学べば誰にでも出願可能なのです。

本記事は研究開発者向けです。

本記事を読まれている方は、出願方法や特許自体を難しく考えている人が多いと思います。
多くの人は出願業務を苦に感じていると思います。
出願したい人は製品に関しては詳しいのですが、特許という公的文章を書くことには慣れていないからです。
私の会社では特許業務を苦に異動した人を何人も見てきました。
しかし、研究開発職と特許は親密な関係にありますので、特許を理解しなければなりません。
お金のある企業ならば弁理士を雇えますので、弁理士に相談するだけで出願業務を行ってくれますが、多くのお金の無い企業は弁理士資格のない知財担当者にお願いするか、自身で出願するしかありませんしてもらうしかありません。
本記事を読めば、特許・出願を理解できるようになるので特許業務を受け入れられるようになると思います。

出願の目的を見失わない

特許を使って権利侵害を求めたり、ライセンスでお金を稼ごうとするなら、研究開発者だけでは出願することが難しくなります。
しかし、多くの人、特に初心者は自社・自分の製品・システムを製造販売できなくならなければ十分です。
最悪、特許にならなくとも出願するだけで自分が作ったものを製造・販売できなくなることはありません。

特許庁の考え

特許庁はより多くの人に出願してもらいたいと考えています。
多くの人が発明をすることで社会が便利になり発展していくからです。
従って、特許庁は基本的に出願されたならば登録にしてあげようとしてくれます。
特許庁のHPには審査基準が公開されています。
また、出願後に審査官とやりとりしながら修正することも出来るのです。
試験やテストとは違って、相談しながら修正できますし、審査基準も変わる事がありませんので、特許を取りやすい親切なシステムになっているのです。

前置きはここまでにして、「特許の書き方」を説明していきます。
説明が長くなってしまいますので、ステップごとに記事を作成しています。

【第一回目】自分が作ったもの、考えたものが特許になるの?発明品なのか調べよう!

「特許の書き方」 の第一回目となるテーマは自分が作ったものや、システムが発明品なのかを調査する回です。
自分が発明したと思われるものが、既に世の中に存在しているのかを調査するのです。
自分は知らなかったけど、既に存在していたら特許を取得することはできません。
特許は先に発明した人に権利が与えられるのです。
ではどうやって調査したらよいのでしょうか。

【STEP 1】
発明したものを単語もしくは文章に落とし込む

最初に行うのは、発明品の分類です。
発明したものがどんな分野のものなのかを定めるのです。

例えば、筆記線を擦ると色が消えるボールペンを発明した場合、どんな分類をしたらよいでしょうか。
ボールペンはインキ、キャップ、ペン先、手持ち軸、リフィルなど製品によって様々な部品が存在します。
擦ると色が消えるボールペンは筆記線が消えるインキが特長です。
インキ以外の部品を置き換えても、筆記線が消えるボールペンには違いが無いからです。
従って、分類は筆記具(文房具)>ボールペン>インキとなるのです。
別視点で考えると、筆記線を消せるゴムキャップであれば、 分類は筆記具(文房具)>ボールペン> キャップとなるのです。
重要なのは、発明した部分を見定めることです。

次に、発明品を構成する要素を考えます。
再び、上記のボールペンを例にします。
筆記線が消えるインキはどのような構成になっているのかを考えます。
ボールペンのインキですから色素である顔料または染料、液体成分(水、溶剤)などの要素が少なくとも考えられます。
筆記線を消せる消しゴムキャップであれば、キャップ、ペン先、手持ち軸、リフィルが要素となります。

発明したものを必要最低限の構成を考えるのです。

前記例題の筆記線が消えるボールペンをインキとキャップで分けましたが、筆記線を消す為にインキとキャップの両方が必要だったならば、インキとキャップの両方を発明の構成要素とする必要があります。
最初は、最低限の要素がわからないと思いますので、全ての発明要素を書き出します。
書き出した要素を類似した他の要素と置き換えてみます。
例えば、消えるインキの染料を他の染料に置き換えたり、無くしても色が消えるならば、その染料は発明の構成要素ではありません。そして、顔料を他の顔料に置き換えたり無くすと、色が消えなくなるならば、その顔料は発明の構成要素となります。

【STEP 2】
検索サイトで発明要素でキーワード検索を行い、既出の発明であるか調査する。

ここまでで、発明したものをざっくりと必要最低限の構成要素を言葉にすることが出来たはずです。
仮に3つの要素に分けられたとして、この3つの要素から調査を行います。
特許庁が運営する「J-Plat Pat」を使って調査します。
このサイトは無料で使えますのでご安心ください。
会社で有料の検索サイトを利用している方であっても、基本的な調べ方の考え方は同じです。
私は履歴が残るので有料の「CyberPatent Desk」を利用していますが、まずは、無料で使えるもので調査してみましょう。
*もっとサービスの良い検索サイトもございますので、サービスと価格のバランスを考えてご利用ください。

  • J-Plat Pat」 のトップページから左上の「特許・実用新案」にカーソルを合わせて「特許実用新案検索」をクリックします。
  • 次に、3つの要素を「キーワード」に打ち込みます。

左隣の検索項目はひとまず「全文」で構いません。
キーワードを打ち込んだら「検索」をクリックします。
*慣れてきたらで構いませんが、「分類番号・記号」「発明者」「出願日」「請求項」「実施例」など検索箇所を絞り込みましょう。
絞り込むことで、検索精度が高まりますので効率よく調査を行えるようになります。
検索項目機能を使いこなさなくとも調査を行えますので最初は「全文」で調べましょう。


次に検索結果が表示されます。

  • 「検索結果が3000件を超えたため表示できません(132550件)。検索オプションの日付指定などで検索範囲を絞り再度検索してください。」と表示されたので、キーワードを限定的なものにするか、要素を追加します。


*他の検索サイトでは3000件を超えても調査することが出来ますが、慣れた人でも100件で1時間程の調査時間となりますので、出来る限り1000件以内になるように調整します。

  • 上記の通り、新たに「ボールペン」と「変色」を要素に追加します。

発明品がボールペンであること、色が変わる効果なので変色をキーワードとしました。
*キーワードにも同意語、類似語、外来語、通称、上位概念、業界語などを勘案して設定する必要があります。これは中級者になりますので、別途の記事で説明する予定です。

要素を追加した結果、1098件を得られました。

  • この1098件を1件づつ確認していきます。

*調査対象は基本的にはここで表示された物件で構いません。審査官も出願公報を使って審査します。
但し、論文も記事なども調査対象になりえます。こちらも難しいので別途記事で説明します。

  • 上記図の特開2021ー165011をクリックします。

そうすると下記の画面が表示されます。

出願書類は主に5つの構成となっています。
「書誌」→出願人、出願日など出願時の情報
「要約」→発明をわかりやすくまとめた文章(*審査対象外なので出願人が自由に書ける)
「請求の範囲」→発明品の権利範囲
「詳細な説明」→発明品を構成する部分を説明する部分。
「図面」→ 発明品を構成する部分を説明する補助図。
*図面は二つありますが、同じものです。右列にあると見やすいので分けてあります。

この中で重要なのは「請求の範囲」「詳細な説明」2つですのでこの2つを確認していきます。
「書誌」と「要約」は形式的な物なので、最初は気にしなくても構いません。

  • 「請求の範囲」をクリックすると下記の画面が表示されます。

検索ワードがハイライトされて見やすくなっています。
請求項1には「熱変色インキが収納され」という文章と「熱変色させる摩擦体」という文章に着目されます。
例題として、「筆記線が消えるボールペン」を発明したとしましたが、皆様ご存じの通りそのような製品は既に市販されていますので、既出の発明品であったことがわかります。

  • まずは検索された物件の請求項と自身が発明したものを比較していくのです。

今回の調査では1件目に既出の発明であることがわかりましたが、最悪の場合1000件目で見つかることがあります。
地道に一件づつ確認していきましょう。
*慣れてくると、検索精度が高まるので検索数が減り、直ぐに調査が終わるようになります。
具体的なテクニックに関しては中級編で紹介する予定です。

  • 次に「詳細な説明(実施例)」と比較していきます。

「請求の範囲」を比較して自分の発明と違っていてもまだ安心できません。
それは「請求の範囲」には必要最低限の情報しか書いていないからです。
「詳細な説明」には発明に関わる膨大な量の要素が書かれています。
「請求の範囲」に書かれていなくても「詳細な説明(実施例)」に自身の発明が書かれていたら特許を取得することが出来ません。

具体的には「詳細な説明」の実施例を確認します。
実施例は発明品の具体的な素材と作り方が書かれています。
発明者以外が出願人の特許を見て発明品と同じものを作れるようにする為です。
発明品を作る為に必要な最低限のものだけではなく、製品として成り立たせる構成も書かれます。
例えば、筆記線が消えるボールペンはインキの液体だけではなく、液体を貯蔵するリフィルが必要になります。
つまり、必要最低限以外の要素が書かれている為、出願人が意図せずにこれから出願しようとしている発明品の要素と同じものを書いてしまっている可能性があるのです。
これから出願する発明者にとっては、昔の出願人が気づかず、たまたま実施例に書いただけなんだから、気にしなくてもよいのではないかと思ってしまいます。
しかし、この状況で特許として認められることはありません。
なぜならば、昔の出願人にとっては自分の特許を見られて勝手に製品を作って自分が気づかない効果を見つけただけと思うからです。
もしこの主張が認められなければ、同じ製品を違う使い方をすれば同じ製品を製造できるようになってしまいます。
以上長くなってしまいましたが、「詳細な説明」では実施例をよく見るようにしましょう!

まとめ(STEP 1~2)

出願前の特許調査では「請求の範囲」と「詳細な説明(実施例)」を主に確認していきます。
どちらも全く異なるものであれば、次々に調査を進めていきます。
判断に困る出願や似た出願があれば、後で見返すために公開番号をメモしておきます。

最終的に、自身が発明したものと同じ出願が無ければ調査を終了です。
同じ発明の物件が見つかってしまったら出願を諦めることになります。
さらに、同じ発明の物件が特許を取得していたら、製造販売することもできません。
製造販売する為には、特許有効権利期間が切れているか、取得者からライセンスを購入する必要があります。
実際に、発明品を研究開発した後でこのことに気が付くと、それまでの研究開発の苦労が水の泡となってしまいます。
そうならない為にも、研究開発をスタートする前に本記事のように従来技術調査を行っておく必要があります。

次回の記事では、出願する為の書類の作り方と考え方を説明していきます。

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