- 出願の手順は、「願書の作成」→「特許庁に提出」→「手数料の支払い」だけ。
- 願書は、「特許願」「特許請求の範囲」「明細書」「図面」「要約書」の5部に分けられる。
- 明細書は、【書類名】、【発明の名称】、【発明の概要】(【発明が解決しようとする課題】、【課題を解決するための手段】)に分けられる。
- これらの中でも「特許請求の範囲」は特許権利範囲を決める重要な部分である。
- 明細書では「新規性」と「進歩性」を意識し、従来技術と比較しながら書くことが重要。

第一回目では、自分の作った発明品が本当に世の中に無いのかを調査しました。
恐らく、本記事を続けて読んで頂いている方は、調査が済んで、自分の作った物が世の中に無い発明品であったことを確認していただいている方が多いと思います。
この記事では、実際に書き始める前に出願するまでの手順と必要な書類を説明していきます。
【STEP 3】
出願までの手順を知る。
出願の手順は、ざっくりと「願書の作成」→「特許庁に提出」→「手数料の支払い」だけです。
出願する為には、願書を書き、郵送し、数週間後に届く払込書で手数料を支払います。
インターネットで提出することもできます。
出願の為の手順はたったこれだけなのです。
しかし、一番大変なのは「願書の作成」です。
本記事ではここを重点的に説明していきます。
【STEP 4】
願書の全体像とそれぞれの役割を把握する。
*願書をワードで作成することが出来ます。特許庁のHPに基本書式がありますので、ダウンロードしてみましょう。
願書は、「特許願」「特許請求の範囲」「明細書」「図面」「要約書」の5部に分けられます。
「特許願」は、氏名、住所、電話番号など出願人に関する基本情報を記載します。
「特許請求の範囲」は、特許の権利範囲を示す部分です。
「明細書」は発明品がどのようなものかを説明する部分です。
「図面」は物体の形状に関する発明の場合に必要になります。必要なければ提出しなくても構いません。
「要約書」は発明品がどんな課題をどうやって解決したのかを簡潔で明瞭に記載する部分です。
この5部の中で最も重要なのは「特許請求の範囲」です。
この部分は、一字一句の違いでもめ事を起こしやすいデリケートな部分です。
前の記事(STEP1)で出願前の調査で使用したキーワードを繋いで文章化します。
例えば、「インキ、顔料、水、ボールペン、変色」のキーワードで従来技術調査を行い、同じ発明が無かったとします。
これらのキーワードを繋ぎ合わせます。
「少なくとも水、変色顔料からなるボールペンインキ組成物」という特許請求の範囲とすることができます。
この文の「少なくとも」は常套句であり、最低限の構成であることを説明します。
「少なくとも」と表記することで、書かれていない構成成分を使っても良いという請求範囲にすることができます。
基本的には、従来技術調査で最低限の発明構成を調査して、同一の発明が無いことを確認しておりますから、「少なくとも」を記載しておく方がよいと思います。
請求項の最後は発明の分野や名称を示します。
例えば「ボールペン用インキ組成物」ならば、分野はボールペンに使われるインキの成分に関する出願であることを意味します。
次に重要なのが「明細書」です。
明細書は発明を説明する部分なので明細な説明を記載しなければなりません。
明細書は少なくとも以下の項目に分類されます。
【書類名】
【発明の名称】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【課題を解決するための手段】
【書類名】には「明細書」と書きます。これは固定の記載です。
【発明の名称】は発明の内容を簡単に表したものです。
例えば、「ボールペン用インキ組成物」などです。
請求項の最後のワードを当てらうことが多いです。
【発明の概要】からが明細書の本書になります。
発明の概要はその言葉の通り、発明したものの概要を説明する箇所になります。
【発明が解決しようとする課題】では、進歩性を説明し、
【課題を解決するための手段】では、新規性を説明します。
キーポイントは「新規性」と「進歩性」です。
この2点を上手く説明できれば特許を取得することが出来ます。
「新規性」は発明品が世の中に無いということを説明します。
前回の記事で発明したものが世の中に無いことを調査したのは「新規性」を確かめる為だったのです。
よくある勘違いとして、「同じ発明品だけど、効果が違うから特許になるのでは」と考える人がいます。
例えば、渋滞なく素早く人を目的地まで運べる効果の空を飛ぶ車が発明されているとします。
他の人が同じ車だけど、人以外にも馬を運べる旨の出願したとします。
それは空飛ぶ車の新しい効果を見つけただけで、発明として認めれません。
「進歩性」は発明品が世の中にどんな利益(効果)をもたらしてくれるのかを説明します。
効果は、「顕著な効果」であるか、「新規な効果」であるかを審査されます。
発明したものに新規性があっても、効果が顕著でなければ特許になりません。
例えば、布が厚い傘を発明したとします。
従来と比べて布が厚くなったことで構成に違いが生まれ「新規性」を説明することができます。
しかし、「雨降った時に使用者が濡れない」という効果で出願した場合、進歩性があるといえるでしょうか。
答えは、進歩性が無いと判断されることが多いでしょう。
雨が降っても濡れないことは、従来の傘でも達成されているからです。
進歩性を認めさせる為には、「長い時間雨に降られても雨がしみ込まず使用者が濡れない。」というような説明にするとよいでしょう。
濡れないという効果は同じですが、その効果が顕著に高くなっていることがポイントです。
これが「顕著な効果」で進歩性を説明したものです。
もう一つの「異質な効果」を説明します。
同様に傘で例えると、生地が厚くなったことで「紫外線を防げる」という効果を記載した場合、従来の「雨に濡れない」効果に対して、異質な効果であることがわかります。
- 出願の手順は、「願書の作成」→「特許庁に提出」→「手数料の支払い」だけ。
- 願書は、「特許願」「特許請求の範囲」「明細書」「図面」「要約書」の5部に分けられる。
- 明細書は、【書類名】、【発明の名称】、【発明の概要】(【発明が解決しようとする課題】、【課題を解決するための手段】)に分けられる。
- これらの中でも「特許請求の範囲」は特許権利範囲を決める重要な部分である。
- 明細書では「新規性」と「進歩性」を意識し、従来技術と比較しながら書くことが重要。
次回は、実際の特許文献を引用してより具体的に説明していきます。