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特許初心者向け【特許の書き方】③願書の書き方(実例)

本記事の一覧

  • 願書は、大きく「特許願」「明細書」「図面」「特許請求の範囲」「要約書」の5部に分けられる。
  • 特許願」は出願人の情報を書く部分
  • 明細書」は発明について詳細に説明する部分
  • (従来技術と発明品を対比し、発明品だけが達成できる効果とその構成を説明する)
  • 図面」は文字だけでは説明できないことを図で説明する部分
  • 特許請求の範囲」は発明品の必要最低限の構成で説明する部分
  • (特許の権利範囲を決める最も重要な部分)
  • 要約書」は課題と解決手段を書く部分

 第2回目では、出願に必要な手順と書類、各書類の目的について解説してきました。
本記事では、具体的な書き方を解説してきます。

STEP 5-1 「願書の書き方」ー特許願ー

願書は、「特許願」「特許請求の範囲」「明細書」「図面」「要約書」の5部に分けられます。

  • 「特許願」は、氏名、住所、電話番号など出願人に関する基本情報を記載します。
  • 「特許請求の範囲」は、特許の権利範囲を示す部分です。
  • 「明細書」は発明品がどのようなものかを説明する部分です。
  • 「図面」は物体の形状に関する発明の場合に必要になります。必要なければ提出しなくても構いません。
  • 「要約書」は発明品がどんな課題をどうやって解決したのかを簡潔で明瞭に記載する部分です。

まずは「特許願」の書き方をみていきます。
*特許庁HPの申請書類の書き方ガイドを引用します。
特許庁のHPからテンプレートをダウンロードできます。
ワードを使って編集していきます。

【書類名】        特許願 

【整理番号】       63-A-1-A 

【提出日】        令和 2年 1月 6日 

【あて先】        特許庁長官殿 

【国際特許分類】     A01B   1/00 
             A01C   1/01 

【発明者】 

   【住所又は居所】   東京都千代田区霞が関1-3-1 

   【氏名】       発明一郎 

【特許出願人】 

【識別番号】     300000001 

【住所又は居所】   東京都千代田区霞が関3-3-3 

   【氏名又は名称】   特許株式会社 

【代理人】 

【識別番号】     100000001 

【住所又は居所】   東京都千代田区霞が関3-3-5 

   【弁理士】 

   【氏名又は名称】   代理一郎 

   【電話番号】     03-3123-4567 

   【ファクシミリ番号】 03-3123-4568 

【手数料の表示】 

【予納台帳番号】   123456 

【納付金額】     14000 

【提出物件の目録】 

   【物件名】      明細書     1 

   【物件名】      特許請求の範囲 1 

   【物件名】      要約書     1 

   【物件名】      図面      1 

上記の項目に従い、名前、住所、電話番号を記載していきます。
弁理士など代理人がいればそちらも記載していきます。
登録番号は、事前に特許庁に登録してある番号を記載します。
過去に出願している出願物件があればそのままコピペします。
提出物の目録では、願書に添付する書類を明示します。
図面が無ければ図面の行を削除します。

特許庁のHPの「さくっと書類作成」で作ることもできます。

ここで「特許願」の書き方は終わりです。
事務的な内容ですので、過去に出願していればそれを参考にすれば簡単に書けます。
初めての出願であれば、登録した書類を参考に記載を進めます。
「特許願」は最後に記載しても構いません

STEP 5-2 「願書の書き方」ー明細書ー

次は、願書の明細書の部分を作成します。
こちらもテンプレートが特許庁HPにありますので引用して説明していきます。
まずはテンプレートの明細書を見ていきましょう。

【書類名】明細書
【発明の名称】ハンドスキャナ
【技術分野】
 【0001】
 本発明は、走査位置の観測確認が容易なハンドスキャナに関するものである。
【背景技術】
 【0002】
 イメージ入力装置の中で、ハンドスキャナは、入力情報の記載された媒体の形状や媒体上の入力情報の位置を問わず、必要な情報のみを入力できる利点があるので、POS用のOCRの入力部として実用に共されている。
 実用のハンドスキャナOCRは、OCR-BフォントサイズIなど、比較的小寸法の文字のみを入力して確認するものである。文字の上下方向の観測視野は、手のゆらぎを考慮して文字の高さの2倍以上に余裕をもたせてあったが、入力情報の周囲に十分な背景白部のある孤立文字列を扱うため、左右方向は被写体と接続する部分の幅を極力狭くして走査位置が見えやすくするのみで実用上十分であった。
 【0003】
 しかし、文書の部分イメージ入力などに供するときには、比較的広い視野と高い走査解像度を実現し且つ手送り移動の振れを生じにくくするため、書面との接触面積を十分に確保する必要がある。図1は、文書の部分入力に適用するハンドスキャナの外観例と書面との位置関係を示したものであり、1はハンドスキャナハウジング、2は入力書面を表す。また、入力位置P点を含む1点鎖線が書面に対する外観視野を表し、矢印は手送りによるハンドスキャナの移動方向を示している。このようにハンドスキャナハウジングの高さと被覆する面積が大きくなるので、入力位置P点の近傍を視野確認できないという欠点があった。
 【0004】
 一般文書の任意の一部を入力する用途において、この欠点は入力操作性に関して大きな障害である。具体的には、不必要な情報をも入力したり、入力情報の前後がかけたり、あるいは、手送りの曲りによって必要な情報の上下が欠落したりするなどの問題があった。
 【0005】
 この改善策として、密着センサを使用しハウジングの高さ方向の寸法を圧縮する方法がある。図2はこの方法による光学系の実装形態を示すための説明図であって、主走査方向に対して直角な平面による断面図である。図2で、3は1次元イメージセンサ、4はロッドレンズ、5は照明ランプである。しかしながらこの方法でも、センサ、ロッドレンズ、ランプの実装のため無視できない寸法の幅(図2のW)を確保する必要がある。片側から照明してP点を左右方向に移動し、ハウジング側端部(図2のQ点)との距離を短縮しても、センサ基盤の厚みなどに最低5mm程度は必要となる。光学ミラーなどで光路を折曲げる方法もあるが、ハウジングがさらに大きくなり焦点の調整も煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
 【0006】
  【特許文献1】特開2003-000000号公報
【非特許文献】
 【0007】
  【非特許文献1】特許一郎著 「ハンドスキャナのいろいろ」特許出版 2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
 【0008】
 解決しようとする問題点は、高精細な図を手送りで走査入力する操作において障害となる入力位置を目視確認できない点である。
【課題を解決するための手段】
 【0009】
 本発明は、書面の走査位置またはその直前(直後)を常に目視可能とするため、書面に垂直な方向に対して傾斜した光路で受光することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
 【0010】
 本発明のハンドスキャナは、ハウジング上部から斜めの光軸を通して1次元イメージセンサで走査するため、センサの視野すなわち入力位置を、直接あるいは近傍で常に観測確認できるので、入力対象の綴じ込み条件や操作方法に応じて左右の側端部を使い分けられるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
 【0011】
  【図1】図1はハンドスキャナの実施方法を示した説明図である。(実施例1)
  【図2】図2はハンドスキャナの実施方法を示した説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
 【0012】
 ハウジング外または可能な限りハウジング側端部に近い位置からイメージを入力するという目的を、最小の部品点数で、光学系構成部品の厚みを損なわずに実現した。
【実施例1】
 【0013】
 図1は、本発明装置の1実施例の断面図であって、1~5は、図2と同様である。また、6はセンサドライバー、7は信号入出力端子、8は手送り速度検出機構である。
 【0014】
 センサ3は入力位置P点を常に走査しており、ドライバー6の制御によって走査したビデオ信号を端子7から出力する。本発明の主体は光学系の実装方法にあるので、電子、機構系の説明は省略する。
 【0015】
 一般にセンサ受光面の光軸方向の受光光量IC12は、下記の数式1によって求まるということが数学的にすでにわかっている。下記の表に数式の各物理量の実用的な値の例を示す。
 【0016】
  【数1】

 【0017】
  【表1】

 【0018】
 上記の数式において、表に示したように、Iはランプの放射光量、Xは観測面と受光面との距離、V/tは受光面の移動速度である。
 【0019】
 このような光学系の実装形態を採用したので、幾何光学上の特性を実効的に劣化することなく、ハウジング1の側端部(Q点)から書面のイメージを入力できる。従って、操作者にはハンドスキャナの入力位置またはその近傍が常時目視でき、書面入力先頭への位置決め、走査中の方向確認、末尾の確認が容易になる。さらに、ハウジング1の側面を傾斜させることができ、操作者からQ点が見易いので走査中の視点の移動を低減する効果がある。
【実施例2】
 【0020】
 図2の実施例は、ハウジングに取付けたスイッチによって、左右いずれからでも入力できるので、例えば文書の左端から入力する場合は左端の側端部に、右端まで入力する場合は右端の側端部に各々切替えて使用する。副走査の精度を確保するためには、ハウジングの接紙条件の良いことが要となるので、この切替え機能はハンドスキャナの操作性向上と入力対象の拡大におおいに役立つ。
【産業上の利用可能性】
 【0021】
 筺体に取付けたスイッチを用いて容易に左右の選択ができ、側端部に半透明フードを取付けることによって、輝度の大きい照明が必要かつ操作者による入力位置の直視が不可欠な用途にも適用できる。
【符号の説明】
 【0022】
 1  ハンドスキャナハウジング
 2  入力書面
 3  1次元イメージセンサ
 4  ワイドレンズ
 5  照明ランプ


以上のように明細書は、発明がどういったものかを明細に説明する部分となります。
文章の構成は以下のようになっています。

【書類名】
【発明の名称】
【技術分野】
【背景技術】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【課題を解決するための手段】
【発明の効果】
【図面の簡単な説明】
【発明を実施するための形態】
【産業上の利用可能性】
【符号の説明】

●【書類名】は「明細書」です。
●【発明の名称】は、分類を示すような役割ですので、一般的には請求項の締めの言葉を引用します。
テンプレの請求項は、「【請求項1】~~を特徴とするハンドスキャナ。」となっているので、発明の名称もハンドスキャナに合わせます。大事なのは請求項の締めの言葉と一致させることです。
●【技術分野】は、発明品がどの分野に属しているかを書きます。テンプレでは、「本発明は、走査位置の観測確認が容易なハンドスキャナに関するものである。」と書かれています。ハンドスキャナの中でもどんなハンドスキャナなのかを説明します。
●【背景技術】は、従来から存在する製品について記載します。この文章で発明品と従来製品との対比を意識して説明します。従来の製品や発明では達成できなかったことが本発明では達成できることを暗に連想させます。
最初にハンドスキャナの一般的な役割・性能などを説明します。その次に問題点や課題点を挙げます。そして、従来の製品や発明品ではどのような対策・改善が図られていたのかを書きます。最後に、従来の製品や発明品ではその課題や問題点に対して十分ではない、または他の問題が発生したなど、十分な効果を得られていない旨を説明します。
ここで説明に使用した従来の製品や発明品の資料を【先行技術文献】として載せます。資料が特許公報でなければ【非特許文献】に書きます。
●【発明の概要】の【発明が解決しようとする課題】を説明します。背景技術で従来では解決できなかった事を課題として説明します。そして、【課題を解決する手段】では発明品のハンドスキャナの具体的な構成を書きます。ここは請求項1と同じ内容となります。コピペでも大丈夫です。
●【発明の効果】では、発明品を産業利用すると得られる具体的な効果を書きます。前述の課題と矛盾しないように気を付けます。

*発明の概要と発明の効果は審査される明細書の中で請求項に続き、重要な部分です。

●【図面の簡単な説明】では、図面があった場合に、図面の名称を書きます。正面図、斜視図、断面図、作用図などいろいろあります。特許庁に参考となるページがあるので参照ください。似たような発明の従来技術公報を参考にするのも良いと思います。
●【発明を実施する為の形態】は、テンプレでは「【0012】ハウジング外または可能な限りハウジング側端部に近い位置からイメージを入力するという目的を、最小の部品点数で、光学系構成部品の厚みを損なわずに実現した。」としか書いてありませんが、発明品を構成する部分を出来るだけ一つ一つ事細かに書いた方が良いとされています。テンプレに書かれていない構成(部品)でも同じ発明品を作れる可能性があるならそれらの構成(部品)も書いておくと、他社から真似されることが少なくなります。特許を取りたいだけであれば、発明品の一例だけでも構いません。そして、具体的な発明品として実施例を書きます。実施例とは実施した例という意味です。発明品を構成するものが一例しかなければ、一つの実施例で構いません。他の部品でも同様の発明品を作れるならばできるだけ多くの実施例を書きましょう。
●【産業上の利用可能性】は発明品が産業上、どのように利用されるかを各部分です。おそらく【発明の効果】と同じ内容となる場合が多いです。矛盾しないように書きましょう。
●【符号の説明】は図面を利用し、符号を割り振った時に書くものです。各符号に対してどんな部分なのかを説明します。

以上が、明細書の書き方です。願書の中で最も長い文章となります。発明品について明細に書く部分です。他社牽制性を意識せず、発明品の特許を取りたいだけであれば、必要最低限の短い文章でも構いません。他社から真似されたくなければ、少しでも同様の発明品を作れる可能性のある構成(部品)を書いておくと後々、役に立ちます。

STEP 5-3 「願書の書き方」ー請求項ー

次は、願書の請求項の部分を作成します。
こちらもテンプレートが特許庁HPにありますので引用して説明していきます。
まずはテンプレートの明細書を見ていきましょう。

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
 レンズ系を介して書面からの反射散乱光を1次元イメージセンサに受光することで主走査を行い、書面を被覆したハウジングを手送り移動することで副走査を行う書面イメージの入力手段において、該ハウジング内の上部に装着され、その受光面が書面と平行になるように設定された1次元イメージセンサと、書面に垂直でセンサ列方向軸を含む平面に対して傾斜し、かつ該センサ列方向軸と直行した光路面を構成するレンズ系とを備え、該ハウジングの被覆側端部で主走査することを特徴とするハンドスキャナ。

前述の明細書とは異なり、文章が短いことがわかります。
請求項は権利範囲を書く所です。発明品を文章化する最も重要な文章です。一文字間違えたり曖昧な表現にすることは望ましくありません。発明品を具体的、端的に書く必要があります。
上記の請求項から、1次元イメージセンサーが「該ハウジング内の上部に装着」、「その受光面が書面と平行になるように設定」されていること、レンズが、「書面に垂直でセンサ列方向軸を含む平面に対して傾斜」、「かつ該センサ列方向軸と直行した光路面を構成」されていること、「該ハウジングの被覆側端部で主走査すること」が主要な構成となっています。
簡単にすると、イメージセンサーとレンズと走査部の3つが特別な構成となっているハンドスキャナーであるということです。
既に、従来技術調査を済ませていると思いますので、調査で使った構成を主軸にして説明文を組み立てていきます。
テンプレでは、イメージセンサーとレンズと走査部について従来技術調査を行い、発明品と同じものが無かったとします。次に、それぞれの構成部がどの位置にどういう状態でなど、従来品と異なる説明を誤解されない表現で説明します。そうすると、テンプレのような請求項が出来上がります。

STEP 5-4 「願書の書き方」ー要約書ー

要約書は最後に書くことが多い部分です。
明細書で書かれている【発明が解決しようとする課題】と【課題を解決するための手段】を元に書いていきます。文章に問題なければコピペでも構いません。図が必要ならば図面も添付します。

まとめ

以上のように、願書の書き方を説明しました。
書く文章が複雑なように感じますが、従来技術調査を行っておけば、説明に必要な書類や情報がそろっているので時間をかければ案外、簡単に書くことが出来ます。
逆に言えば、従来技術調査を怠っていたりすると、対比すべき従来技術や請求項が上手く書くことが出来ないので、願書をスムーズに書くことが出来ず、再度従来技術調査を行うこととなります。

注意すべき点としては、出願の目的に沿っているかを確認する必要があります。
発明品だけの特許を取りたければ、明細書は薄くなりますが、他社からの類似品、模倣品を防ぎたければ明細書で多くの事を書かなければなりません。極端な話、明細書で書けば書くほど他社をけん制することが出来るようになります。しかし、それに見合う利益と労力のバランスを考えて明細書に詰め込む内容を精査する必要があります。

  • 願書は、大きく「特許願」「明細書」「図面」「特許請求の範囲」「要約書」の5部に分けられる。
  • 特許願」は出願人の情報を書く部分
  • 明細書」は発明について詳細に説明する部分
    (従来技術と発明品を対比し、発明品だけが達成できる効果とその構成を説明する)
  • 図面」は文字だけでは説明できないことを図で説明する部分
  • 特許請求の範囲」は発明品の必要最低限の構成で説明する部分
    (特許の権利範囲を決める最も重要な部分)
  • 要約書」は課題と解決手段を書く部分

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