今回は特許6987004を紹介していきます。
*詳細を知りたい人は該当の特許番号から直接お調べください。

- ヤンマーが新たに特許を取得した製品がどんなものか知りたい人
- 農業業界関係者でヤンマーについて情報を集めたい人
- ヤンマー独自の水稲の育稲方法を知りたい人
- 出願人(会社)について
「ヤンマーパワーテクノロジー株式会社」 - どんな発明をしたのか
「作業時に苗に損傷を与えすぎるリスクを低減できる水稲の育苗方法」 - どうやって発明したか
「平面視長方形状の育苗箱の短辺よりも長いローラ幅を有する転圧ローラを、前記育苗箱の長辺方向に沿って前記育苗箱の上を転動させる」
ヤンマーが発明したのは「 作業時に苗に損傷を与えすぎるリスクを低減できる水稲の育苗方法 」です。

近年、種籾(種として苗代にまくために選んでとっておくもみ)を高密度で播種(種まき)して育苗することで、低コスト化や省力化を実現する試みがなされています。
このような高密度播種における課題のひとつとして、育苗期間における苗の徒長現象(作物・樹木の茎や枝などがむだにのびてしまう現象)が多いことが挙げられます。
徒長が原因で、ムレ苗、立ち枯れ苗などの病気が発生してしまいます。
多くの苗が光を求め競い合うため、上にばかり伸びてしまい、茎の細い苗となるのです。
また、発根作用も弱まり、根の量が少なくなりマット形成が出来ず、移植作業における様々なトラブルの原因となってしまいます。
移植後も活着(移植や挿し木・接ぎ木をした植物が、根づいて生長すること)までに時間がかかり苗の消滅につながってしまい、田植え作業のやり直しや、減収につながってしまいます。
ところで、水稲を育苗箱で育苗する場合、播種後の根上り、覆土の持ち上がりなどが生じるため、それを防止するための転圧機があります。
しかしながら、このような転圧機を用いた場合、育苗箱の幅よりも転圧機の幅が短いため、育苗箱にかかる圧力の調整が困難で苗に損傷を与える恐れがありました。
また、育苗中の水稲の茎を曲げるなどの損傷ストレスにより茎が太くなり、根張りが充実することで、苗が丈夫になることが知られています。
この作業においても同様に、育苗箱にかかる圧力の調整が困難で必要以上に苗に損傷を与える恐れがありました。
そこで、ヤンマーは上記課題に鑑み、作業時に苗に損傷を与えすぎるリスクを低減できる水稲の育苗方法を発明しました。
「平面視長方形状の育苗箱の短辺よりも長いローラ幅を有する転圧ローラを、前記育苗箱の長辺方向に沿って前記育苗箱の上を転動させる。」
上記のローラ工程について説明します。
芽が伸びてくると、覆土が持ち上げられます。
覆土が持ち上げられた際、半日間乾燥させた後、転圧ローラを育苗箱の上を転動させることで、覆土を落とすことができます。
また、転圧ローラを使用すると、苗の茎は曲げられるが、曲げられた苗はストレスにより内部でエチレンが生成され、根を張りながら茎が太くなり、徒長を抑制できます。
また、転圧ローラで苗全体に均一にストレスを与えることで、草丈が揃い、移植トラブルが減り、植付け精度も向上します。

上図1は、転圧ローラ2を育苗箱1の上で転動させている状態の斜視図で、育苗箱1は、平面視長方形状の箱体です。
育苗箱1の外形は、平面視で長方形の短辺が300mm、長辺が600mmとなっています。
育苗箱1は、短辺方向及び長辺方向に複数並べて配置されています。
転圧ローラ2は、ローラ部21と把手部22を備えています。
把手部22の先端であってローラ部21の上方には、ウェイトを載せて重量を調整するためのウェイト台22aを設けても構いません。
ローラ部21は、育苗箱1の上、具体的には育苗箱1の縁部の上を、育苗箱1の長辺方向に沿って転動されます。
ローラ部21のローラ幅wは、育苗箱1の短辺よりも長いため、転圧ローラ2のローラ部21が育苗箱1の縁部に確実に支持されながら転動されるため、作業時に苗に損傷を与えすぎるリスクを低減できるのです。
ヤンマーパワーテクノロジー株式会社は農業やエンジンなどの機械を製造販売する会社です。
農業機器と言ったら「ヤンマー」というほど有名です。
ヤンマーパワーテクノロジーはヤンマーホールディングスの一部の会社です。
ヤンマーグループの技術研究所にあたります。
ヤンマーは一般人にとってはCMなどで名前を聞くばかりであまり関わりがありません。
しかし、農業関係者にとってはかなりお世話になっている会社と思います。
調べて分かったことですが、グループ会社を含めて上場しておりません。
しかし、売り上げは3000億円にせまっており、大手企業と言えます。
今回のヤンマーパワーテクノロジーが発明した水稲の育苗方法は、複雑な機械を使ったものではなく、シンプルなものです。
ヤンマーといえばエンジン、農業機器のイメージが強いので新しい農作機を発明したと思っておりましたが、特許の内容を見ると、育苗箱よりも幅の広い転圧ローラーで転がすだけという発明でした。
私は農業のことをあまり知りませんが、箱よりも幅の広いローラーで転圧すれば、箱の縁の上をローラーが転がり、作物に余分な圧がかからなくなり、均一な圧となることを、業界人なら当たり前のことだと思うのではないでしょうか。
特許は昔から知られている当たり前の方法であっても、出願されていなければ特許を取られてしまう可能性があります。
権利を奪われない為には、昔から知られている公知の資料を特許庁に提出し、半年以内に主張しないといけません。
こうならない為にも、昔からやっている方方法であっても出願物を調査する必要があります。
今回の特許を読んでそのように思いました。
本記事で紹介した製品に似たものが既に発売されています。
ヤンマーが製造元になっていれば、問題ありませんが、そうではないと、将来的に販売停止になる可能性があります。
特許は製造販売の独占権ですからね。
リンクを張りましたので、急用の方はご購入を検討ください。
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