こんにちは!ぱかぞーです!
今回はバルミューダ株式会社の加熱調理装置に関する特許情報を紹介します!
*本記事では難解な特許を分かりやすく解説していきます。
本記事では特許6910088から文章と図を引用させて頂いています。
詳細を知りたい人は該当の特許番号から直接お調べください。


●衛生的なスチームトースターを探している人
●新鮮な水で美味しいパンを食べたい人
●バルミューダーの製品や戦略を分析したい人
- 出願人について
「バルミューダ株式会社」 - どんな発明をしたのか
「水が無くなると自動的に停止するスチームトースター」を発明した。
この発明は「BALMUDA The Toastar」として販売されています。
*下記リンク参照 - どんな利益が期待できるか
「常に衛生的に新鮮な水蒸気でトースターを焼くことができ、より安心して食事することが出来ます。 」 - 従来の製品はどんなものだったか
「衛生面的に問題があったり、装置タンク内の水を捨てる必要があった」 - 市場性
「 この発明品は大きな売り上げには繋がらないでしょう」 - まとめ
![]() | 価格:25,850円 |

【氏名又は名称】 バルミューダ株式会社

バルミューダはおしゃれな生活家電メーカー です。
バルミューダは「スチームトースター」「オーブンレンジ」などレトロでおしゃれな商品を取り扱っています。
四季報によると、扇風機や調理家電を主力にしています。
機能性やデザイン性を高く評価されています。
メディア露出をしているため、テレビでよく紹介されています。
そして、流行りのファブレス(自社工場を持たない)ですので利益が生まれやすい収益構造となっています。
バルミューダは2003年に設立しました。
そして2015年にヒット商品となった「スチームトースター」を販売しました。
その前は扇風機を主力としていましたが、スチームトースターの活躍によってバルミューダといえばトースターのイメージが付きました。
バルミューダはHPで「素晴らしい体験を」をキーワードに掲げています。
バルミュ ーダはお客様が道具やサービスに求めているのは、驚きや感動、嬉しくなるような体験と考え、電化製品という道具を通して、心躍るような、素晴らしい体験を皆様にお届けしたいと考えているようです。
決算情報 | 2020年度 | 2019年度 |
---|---|---|
売上高 | 126 億円 | 108 億円 |
営業利益 | 13 億円 | 11 億円 |
経常利益 | 13 億円 | 10 億円 |
純利益 | 8 億円 | 6 億円 |
売上高は126億円です。
バルミューダーは中小企業といったところでしょうか。
設立から18年でここまで大きく成長したことを考えれば今後にも期待できそうです。
営業利益率は約10%です。
一般的には十分な利益率です。
ファブレスですから、設備や人員など原価に影響するコストを抑えられています。
経済的に優良企業と言えます。
経常利益と営業利益は殆ど同じ金額となっています。
バルミューダは本業で稼いでいる安定した企業です。
純利益率は6%です。
大体3%を超えていれば十分ですから問題ありません。
また純利益は2019年度と比べて増益しています。
コロナ渦の巣ごもり特需の影響でしょうか。
バルミューダは財務的に問題のない会社と言えます。
【請求項1】
調理対象物を収容する調理庫が内部に配置された箱状の筐体と、所定量の水を収容可能な計量カップとを備え、
前記筐体の内部には、前記調理対象物を加熱するヒータと、前記計量カップに収容された所定量の水が供給されるボイラ容器及び前記ボイラ容器を加熱するボイラヒータを備えて前記調理庫内に水蒸気を送り込む水蒸気発生器と、前記ヒータ及び前記ボイラヒータの動作を制御する制御部とが設けられ、
前記制御部は、前記調理対象物の調理が開始されると前記ボイラヒータの動作を開始して前記ボイラ容器に供給された所定量の水を加熱し、前記ボイラ容器に供給された所定量の水を全て蒸発させた後に前記ボイラヒータの動作を停止し、前記ボイラヒータの動作の停止から前記調理対象物の調理が終了するまで前記ヒータにより前記調理対象物を加熱することを特徴とする加熱調理装置。

バルミューダが発明したのは「トースター 」です。
上記の文章を区切ってそれぞれを解釈をしていきます。
構成 | 請求項1 | 解釈 |
---|---|---|
A | 調理対象物を収容する調理庫が内部に配置された箱状の筐体と、所定量の水を収容可能な計量カップとを備え、 前記筐体の内部には、前記調理対象物を加熱するヒータと、前記計量カップに収容された所定量の水が供給されるボイラ容器及び前記ボイラ容器を加熱するボイラヒータを備えて前記調理庫内に水蒸気を送り込む水蒸気発生器と、前記ヒータ及び前記ボイラヒータの動作を制御する制御部とが設けられ、 | ①箱状の筐体 ②計量カップ ③ヒーター ④ボイラ容器 ⑤ボイラヒーター ⑥水蒸気発生装置 ⑦制御部 以上7つの部品からなる |
B | 前記制御部は、前記調理対象物の調理が開始されると前記ボイラヒータの動作を開始して前記ボイラ容器に供給された所定量の水を加熱し、前記ボイラ容器に供給された所定量の水を全て蒸発させた後に前記ボイラヒータの動作を停止し、前記ボイラヒータの動作の停止から前記調理対象物の調理が終了するまで前記ヒータにより前記調理対象物を加熱することを特徴とする加熱調理装置。 | 加熱開始後、水がすべて蒸発したら自動的に停止する制御を行う |
請求項1を構成分けすると、A~Bの2つの構成から成り立つ文章であることがわかります。
構成Aでは発明品の部品の説明をしています。
少なくとも7つの部品から成っています。
それぞれの部品は一般的なトースターであれば備えている部品なのでこの構成には新規性がありません。
構成Bでは発明品の制御内容を説明しています。
特徴的なのは入れた水が全て蒸発すると自動的に加熱が終了する制御です。
この特徴が本特許の本質的な部分となります。
では、この発明品は我々にどんな恩恵を与えてくれるのでしょうか。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、調理対象物の水分を適切に管理すると共に、表面を焦がさずに調理を行うことで、美味しく調理することが可能となる。また、スチーム機能を有しながら、水タンクを不要とし、また水を全て使い切ることで、調理対象物の衛生状態を適切に保持して調理することが可能である。

この発明品によって、我々は「常に衛生的に新鮮な水蒸気でトースターを焼くことができ、より安心して食事することが出来ます。」
本発明のスチームトースターはトースターを焼くのに必要な水を入れた後に加熱をスタートします。
そして、水を使い切ると自動的に停止するシステムになっています。
トースターを使うたびに水を使い切るので、使わない時でも装置内に水がありません。
水は常温で放置すると細菌が増えていき、衛生的に悪くなってしまいます。
装置内でカビや水垢が発生してしまうと掃除するのも大変です。
それを防ぐために装置内の水を捨てようとしても装置が重たく、水を捨てることは困難です。
これらの課題を部品を無くしてシステムで解決したのが本発明なのです。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した加熱調理装置では、次のような問題があった。すなわち、主たる用途である「トースト」調理において、調理中に食パンなどのパン内部にあらかじめ含まれている水分が蒸発してしまい、食感や味が失われてしまう問題があった。また、調理中にトースター内部から香ばしい匂いがするように、水分の蒸発と共にパン自体に含まれているバターの香りも空気中に逃げてしまい、風味が大きく損なわれてしまっていた。
【0005】
さらに、調理パンやクロワッサンなどにおいては、パン内部まで加熱する前に表面が焦げてしまうなど、最適に温める方法がなかった。
【0006】
また、ボイラへ水を供給するために水タンクが必要となり、タンク内の水を使い切らなかったり、ボイラで水が余った場合には、衛生面の問題から洗浄したり、水を捨てる手間が必要であった。

従来の製品は、「衛生面的に問題があったり、装置タンク内の水を捨てる必要があった」のです。
スチームトースターは熱によってパンを焼くだけではなく、水蒸気を装置内に充満させることでパンに含まれていた水分を蒸発させにくくしています。
パン内部の水分が減らないことでもっちりとした食感のパンを食べることができるようになります。
しかし、一般的にトースターに入れる水は多めに入るようになっています。
それは、加熱しているときにタンクから水が無くなってしまうと、装置内の水蒸気が少なくなってしまいます。
そうすると、パンから水分が蒸発してしまい、パンが硬くなってしまいます。
水切れを防ぐために装置内に多めに水を貯蔵できるタンクが必要なのです。
しかし、本発明では必要な水を入れた後タンク内の水分が無くなると自動的に停止します。
従って装置内に水が残ることが無く、毎回使い切ることが出来るのです。
「 この発明品は大きな売り上げには繋がらないでしょう 」
現在、スチームトースター市場は全盛期を過ぎ、熟成期に入っています。
基本機能であるスチーム機能はどの製品にも搭載されているため、売上を伸ばすためには新しい機能など消費者が認める付加価値が必要です。
本発明の特徴である「衛生的な調理」を消費者が付加価値として認めるかどうかが重要です。
一見、料理では衛生さが重要であることを理解できるでしょう。
しかし、スチームトースターで使用される水は水蒸気です。
水を水蒸気にするためには少なくとも100度以上の加熱が必要です。
水に繁殖した菌は加熱殺菌されるため、水蒸気は衛生的なのです。
もちろん、見るからにカビが生えてしまっている状態で加熱殺菌をしても水蒸気と一緒に死んだ菌も飛んでしまうので衛生的に良くありません。
従って、頻繁にスチームトースターを使う人にとっては、水が腐る前に使い切れるので本発明品の効果を享受することができません。
逆に、毎回水を加えないといけないので手間がかかってしまいます。
本発明の効果を享受できるのは、頻繁にスチームトースターを使わない人です。
ペルソナで表現すると、普段は忙しくて家であまり料理はできないけど、たまにトースターで美味しいパンを食べたい社会人、一人暮らし、女性といったイメージでしょうか。
スチームトースターが2万円を超えるものですから、料理にこだわりがない人はあまり欲しがらないと思います。
まとめると、料理が好きだけど忙しくて普段は料理できないけど週末の休みの日に美味しいトースターを食べたい人しか前向きに購入を検討しないと思われます。
非常にニッチな市場となっていますので発明に書かれている機能では大きな売り上げは見込めないでしょう。